岡山県の備前焼は、日本の中世(平安末期〜安土桃山時代)に盛んに稼働していた六大窯業地「日本六古窯」の一つに数えられます。その特徴は、備前の土を使い、彩色などを用いず、土味を生かしてしっかりと焼き締めたもの(焼締陶)です。
現在も備前焼の中心地である「伊部(いんべ)」の集落に、昔からの窯元が密集しており、中には室町時代から続いている家もあります。その中で「備州窯」の歴史は比較的新しく、創業は昭和49(1974)年。人間国宝の故山本陶秀の考えで、長男夫妻が門下の弟子を育てるためにはじめたのがきっかけでした。そのため伝統を守り続ける名陶の窯元とは一線を画し、次々と新しい備前焼作家が輩出されてきたのが、この窯の大きな特徴です。現在では、備前の窯元のなかでも最大規模のものとなっています。
備州窯は、備前では珍しく、予約をしなくてもガラス越しに作陶風景を見学することができます。ロクロなど、備前焼の手づくりの技を身近にみることができます。また、窯場も見学ができ、タイミングがあえば、伝統的な「登り窯」に作品を詰めている様子や、窯を焚いているところなどを見ることができます。陶芸ファンにはたまらない体験でしょう。また、備前焼の体験教室も人気です。
そしてメインはやはりショッピング。1階は、数をたくさん作っている“窯元”商品。2階は若手から人間国宝まで、備前焼の陶芸作家の作品(1点もの)を展示販売しています。中には掘り出し物もありますし、有名作家の作品との出会いがあるかもしれません。
備前焼でお土産として人気なのは、ビアマグやタンブラーなどです。備前焼の土肌が、ビールにクリーミーな泡立ちをつくりだし、味もまろやかに感じると、ビール好きの愛好家がたくさんいます。ガラスとは違って手触りがよく、冷たい飲み物が冷めにくいのも人気の理由の一つです。
また、日本酒ファンなら、伝統的な「徳利」がお勧めです。古くから「備前の徳利、唐津のぐい呑」と言われるくらいで、備前焼の徳利には定評があります。思い切って作家ものを買おうと思われるなら、徳利を見てください。また、大振りの徳利なら、花入として見立てて使う人も多いので、お酒に興味のない女性もぜひ。
さらに、備州窯の商品として人気があるのが「表札」です。形やサイズ、書体を選び、備前焼の“焼け(備前焼は焼き方にいろいろと工夫があります)”から選ぶセミオーダーの個性的な表札です。土色の温かみのある表札は見たら欲しくなる人が続出しています。
備州窯 | 岡山県備前市伊部302-2 | |
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http://www.gift.or.jp/bisyu/ | ||
アクセス | お車の場合 | 山陽自動車道 和気I.C.より約10分 JR岡山駅より約40分 |
公共交通の場合 | JR伊部駅より徒歩10分 JR岡山駅より宇野バス「日生・寒河行」50分、東伊部下車すぐ | |
入場について | ★予約不要 | 気軽にお立ち寄りいただけます |
営業時間 | 9:00〜17:00 | |
休日 | 年中無休 | |
施設 | 工場見学 | 自由見学(製造工程・登窯)/予約不要 |
売店 | 展示即売場(窯元ものから現代作家、人間国宝まで) | |
体験 | 備前焼体験コース |
備前焼の中心地である伊部は古くからの集落であり、駅を中心として30分圏内に大半の有名な窯元や観光スポットが密集しています。車を停めるところもあまりないので、歩いて散策するのがお勧めです。
まずは、駅前の国道2号線沿いにある「備前陶芸美術館」からスタート。国道は新しい通りですので、散策するなら、その一本奥に入った古い街道である「旧山陽道」を歩くのがお勧めです。びっしりと古くからの窯元が並んでいます。
また、その並びには「天津神社」がありますので、ここも立ち寄ってみてください。陶祖が祀られており、境内中に備前焼が溢れています。例えば、タイルの参道、狛犬、瓦、陶板、十二支など。陶芸ファン必見の神社です。